Diamond Secrets

知らずには選べない!
ダイヤモンド基本講座

ブライダルをきっかけに、初めてダイヤモンドのリングを購入するという人も多いのでは? ここでは、知っているようで知らないダイヤモンドの基本に迫る。「なぜダイヤモンドは高いの?」「お手入れの方法は?」などの素朴な疑問を、宝石の鑑別鑑定に携わる「ダイアモンドグレーディングラボラトリー(DGL)」の天羽信之さんにASK。ダイヤモンドとのベストなつき合い方、学んでみて!

お話を聞いたのは 天羽信之さん
ダイヤモンドのグレーディングや宝石の鑑定、鑑別、コンサルテーション、セミナーなどを開催する企業「ダイアモンドグレーディングラボラトリー(DGL)」に在籍。今まで50万個以上のダイヤモンドを鑑定してきたダイヤモンドのエキスパート。

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ダイヤモンドはなぜ高価なの?
A ダイヤモンドは「宝石」の必要条件である「希少性」「美しさ」「耐久性」の全てにおいて鉱物の中で非常に優れた特性を持っているため、昔から人々に愛されてきました。
ダイヤモンドは、地下約150kmより深い所で何億年という時をかけて成長します。そしてダイヤモンドは、マントル起源の火成岩「キンバーライト」を母岩として、火山活動などの急激な地殻変動で地表近くまで運ばれます。このキンバーライトは古い地質構造が保存されている場所にしか存在しません。したがって、ロシア、ボツワナ、オーストラリアなど世界の限られた地域でしか産出されないのです。なお、1ct(0.2g)のダイヤモンドを採掘するためには約4tの採掘原石が必要とされていて、その中で宝石として流通されるものは4分の1程度しかありません。

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ダイヤモンドの輝きの秘密は?
A ダイヤモンドは屈折率が2.42と高いため、臨界角が小さく内部での全反射が起こりやすいのです。分散率は0.044と他の宝石と比べてさほど大きくはありませんが、これらの特性のバランスが、カット加工を施したダイヤモンドの輝きを生み出します。また、シンチレーション(煌めき)、ブリリアンシー(白い光の反射)、ファイアー(虹色の光)のバランスの良さもキラキラと輝く理由。他の鉱物には見られない、ダイヤモンドだけの特徴です。
ブリリアンシーの図 ブリリアンシー(白い光の反射)の図。ダイヤモンド内部に入った光は数回反射して外に出ていくので、輝きが強くなる。

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耐久性はどれくらい強い?
A ダイヤモンドは最も硬い天然の鉱物であり、かつ、靱性(割れや欠けに対する強さ)や安定性(薬品や光線などによる変化に対する強さ)も優れています。数百度を超える熱に接しないかぎり劣化しません。ただし、外的な衝撃にはまれに小さな欠けが生じることは考えられます。また、ダイヤモンドは親油性が非常に強いため、手の油分が付着するとそこに埃などのゴミが付きやすく、その汚れが固着しひどくなると著しく輝きが失われてしまいます。こまめに宝石用クロスなどで拭くことをお勧めします。汚れを落とすには、中性洗剤入りのぬるま湯の中に漬けて油分を取り除き(汚れがひどい場合は歯ブラシなどを使用して)、流水で洗い流せばまた美しい輝きがよみがえります。それでも汚れたと思えば販売店に相談を。洗浄器で汚れを落としたり、地金のケアもしてもらえます。

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4Cは重視すべき?
A 4Cはダイヤモンドを選ぶ基準となるので、もちろん重視すべきです。ダイヤモンドの価値や値段は、4Cと呼ばれるカラット、クラリティ(透明度)、カラー、カットで決まるからです。4Cの中でどのCに重きをおくかは選ぶ方の好みに左右されることが大きいです。例えば予算の範囲でできるだけ大きなダイヤモンドをお望みであれば、カラット(ct)重視で選ぶのがおすすめです。同じ予算で、クラリティを重視するのであれば、逆にダイヤモンドは多少小さめのものになると思います。また、カラーは、色みを帯びていない、「無色透明」に近いほど希少性と価値が高まります。そして、カットによってもダイヤモンドの輝きは大きく変わってきます。カットは、ポリッシュ(研磨)、シンメトリー(対称性)、プロポーション(テーブルの広さ、クラウンの高さや角度、パビリオンの深さや角度など)から考慮されます。ポリッシュ、シンメトリー、プロポーションの3項目すべてが最高評価「エクセレント」と認定されたダイヤモンドを「トリプルエクセレント(3EX)」と呼んでいます。

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なぜいろいろなカラーがあるの?
A 純粋な炭素だけで成長したダイヤモンドは無色透明になりますが、実際に産出されるダイヤモンドは窒素やホウ素などの不純物を取り込んだり、結晶構造の歪みなどが生じるからです。例えば、ダイヤモンドは原子番号6番目の炭素でできていますが、原子番号7番目の窒素との置換が発生しやすく、その結果、濃さが変化してイエローダイヤモンドになります。ホウ素原子との置換や放射線の照射(GR1)によってブルー、結晶格子の歪みでピンクやブラウンにもなります。

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なぜエンゲージメントリングは
ラウンドブリリアントカットが多い?
A ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが一番輝くからです。長方形にカットされたエメラルドカットや、正方形にカットされたアッシャーカットなど、ダイヤモンドにはさまざまなカットがあります。その中でも、ラウンドブリリアンカットは、1919年にベルギーの数学者・宝石職人であったマルセル・トルコフスキーによって、ダイヤモンドの輝きを反射・屈折率といった光学的特性を数学的に証明したものになります。この輝きの方程式は、現代の9割を超えるダイヤモンドカットのルーツになっており、誕生して100年がたった今もこれを超えるカットはいまだ開発されていません。
  • Text / Kyoko Takahashi
  • Produced by HEARST made