愛され続ける理由

1946年の創業以来73年、時代は動き、トレンドはめまぐるしく変わっても、「スタージュエリー」は常に美しくありたいと願う人に寄り添い、笑顔を届けてきた。時を超えて愛されるスタージュエリー、その理由はどこにあるのだろう?

  • 創業者の永井三郎・妙子夫妻。
  • 1980年代まで販売していたアメリカンスタイルのピアス。
  • 1946年頃の横浜・元町の「スタージュエリー」。同じ場所に、現在も本店・本社ビルがある。

「スタージュエリー」は終戦翌年の1946年、横浜・元町で誕生した。元町は戦争中の爆撃によって大きな被害を受けていたが、終戦とともに米軍が進駐。食料品や日用品、家具、衣料品までを扱う賑やかなショッピングストリートに変わっていった。宝飾店も続々と誕生。そのなかに、かつてのスタージュエリーがあった。

やがて、数多くの宝飾店のなかで、スタージュエリーに支持が集まる。理由はふたつ。ひとつは、唯一、自社工房を持っていたこと。熟練の職人がオーダーメイドや細かい修理の依頼に応えることができた。もうひとつは、パイオニア的な品揃え。日本人女性には馴染みのないピアスを国内で初めて本格的に扱っていたことだ。「専門の職人がいて、ピアスも揃っている」――米国の新聞「STARS AND STRIPES」もそう報じた。

実は「ピアス」というのは和製英語で、正式には「ピアストイヤリングス」という。スタージュエリーでは店員同士が「ピアス」と短く省略して呼ぶのが常で、それが現在の呼び名の出発点になった。

右から左へ、ただモノを売るのではない。女性をもっと輝かせたいという強い想いをもち、オーダーや修理のための態勢を取り、ここにしかない商品を揃える――クラフトマンシップとホスピタリティという現在まで受け継がれるスタージュエリーの信念は、すでに創業時の小さな店に貫かれていた。

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  • ドルフィンリング
  • 1985年頃のスタージュエリー元町本店。
  • イニシャルマリッジリング

創業後しばらくは、まだ日本人の海外旅行には制約があったが、一般には手に入りにくいジュエリーを求めて世界を歩き、魅力あるものを買い付けた。同時に日本で多くのデザイナーをサポート。オリジナルのデザインを追求していく。他店にはない直輸入やオリジナルのジュエリーが手に入るスタージュエリーは「元町スター」の愛称で親しまれ賑わいを増していった。しかし、その「元町スター」を、日本のスタージュエリーへと大きく転換する出来事があった。

1970年代に入ってまもなくのことだ。現社長の永井淳二がニューヨークのホテルで開かれたジュエリーの展示会に臨んだ。「それまで日本のジェエリーの世界は、財産としての宝石か安価なアクセサリーか、というふたつしかありませんでした。ところが会場に集まっていた人は、本物のジュエリーをとてもおしゃれに身につけていた。こういう世界があるんだと気付きました。自分の中にあったジュエリーとアクセサリーの垣根が取り払われる瞬間でした」。“ファッションジュエリー”という新たな世界へ、スタージュエリーは大きな一歩を踏み出す。

ヒット作が次々と生まれた。幸せを呼ぶリングとして定着したドルフィンリング、ハマトラの全盛期に伝説的なヒットとなった花のピアス、ノンキャッチのスパイラルピアス、さらにピンキーリングやチャームリング。イニシャルマリッジリングも、それまでにない独創的なアイデアで身につける人の心をつかんでいった。1976年の本店改装はファッションジュエリーを牽引するスタージュエリーの存在を改めて示すものであり、新市場の開拓者として躍進が続いた。

  • デザイナーと原型師の手により、ひとつひとつ丁寧な手作業で仕上げられる。
  • 自社工房「プレミアムワークショップ」での作業風景。
  • ブライダルリングで、「永久保証」を実現できるのも、ものづくりへの確かな自信から。
  • 自社工房「プレミアムワークショップ」。

ユニークなデザインのファッションジュエリーで市場をリードするスタージュエリーの歩みは、デザイナーと原型師が一体となって開発と製作を進める独自のクラフトマンシップに支えられた歴史でもある。それを象徴するのが1992年に元町本店のそばにオープンした工房だった。それまで本店内に構えていたものを移設、より本格的に稼働できるようになった。

その後2011年に大々的にリニューアルされた工房「プレミアムワークショップ」は、メイドインジャパンの自信の表れであったと同時に、あくまでも国内で、自社職人の手で丁寧に作り続けるという決意の表明でもあった。特に原型師と呼ばれる高度な技術をもつ職人を専属で抱えるブランドは国内では他にないという。工房の原型師たちも、お客様の姿を目の当たりにすることで、この人々を輝かせたいという思いを改めて強くしていく。まもなく始まったブライダルリングの「永久保証」という画期的なサービスも、国内での自社一貫生産へのこだわりとメイドインジャパンの誇りから生まれ、業界をリードすることとなった。

  • 2004年に新しく竣工した「スタージュエリー元町本店」。
  • 2013年に誕生した「スタージュエリー銀座店」。

創業60周年を目前にした2004年、現在の元町本店ビルが竣工。2006年に表参道ヒルズの旗艦店をオープン、同時にメンズジュエリー専門店「SJX」を開いた。さらに2011年には、もっと気軽にジュエリーを楽しんでもらいたいと妹ブランド「STAR JEWELRY GIRL」をスタートさせ、2013年には、銀座6丁目に新たな旗艦店を構えた。

創業以来のクラフトマンシップを貫き、日本人の感性やライフスタイルを知るものならではの独創的で美しいデザインをひとつひとつ丁寧に形にし、徹底したホスピタリティを貫いてきたスタージュエリー。愛される理由はそれだけではなかった。

スタージュエリーでは、キンバリープロセスと呼ばれる原産地証明を義務づける制度をまもり、高水準の倫理に従ったダイヤモンドのみを使用し続けている。さらに、誰もがファッションジュエリーを楽しむことができる紛争や貧困のない世界の実現のため、さまざまな社会活動を展開。1993年から、12月25日クリスマス当日の元町本店での現金売上をすべてユニセフに寄付する「UNICEF CHARITY DAY」を実施、2008年には、全国に拡大した現在のクリスマスキャンペーン「BEAR FOR PEACE」となり「クリスマスの笑顔」を届けている。

日本人の体格や肌の色、感性に合わせた繊細で美しいデザイン、自社工房での一貫生産ならではの品質の高さとアフターサービス、そして世界の子どもたちの未来への想い――横浜・元町での創業から73年。スタージュエリーが愛され続ける理由がここにある。

  • Text / Arata Sakai
  • Produced by HEARST made