受け継がれるもの、託した

震災の傷も癒えぬうち、
またも豪雨に見舞われた能登半島。
相次ぐ自然災害が、
日本が世界に誇る伝統工芸、
輪島塗の存続に影を落としています。
連綿と紡いできた技の伝統やクラフトマンシップを
次代につないでいくために。
ジュエリーと輪島塗の職人が出会い、大切にしている想いを互いに重ねながら、ものづくりに挑みました。

INDEX

  • 1
    メイドインジャパン

  • 2
    卓越した技

  • 3
    ⽤の美 × 造形美

1
メイドインジャパン

欧米では漆器のことを「JAPAN」と呼びます。
日本を代表する伝統工芸として、
職人の手から手へと受け継がれてきた輪島塗。
スタージュエリーもまた、創業当初から自社に
アトリエを構え、
一貫してメイドインジャパンの
ものづくりにこだわってきました。

輪島の気候風土が育んだ
日本漆器の最高峰

能登半島北部に位置する輪島市。豊かな自然に育まれて、輪島塗の技は長い時をかけて磨かれ、今に継承されてきました。地域特有の「地の粉」を混ぜた漆を塗り重ねた下地に、幾十にも漆を重ねることで生まれる堅牢さと、沈金や蒔絵が織りなす優美さ。輪島塗の魅力である強さと美しさは、守り抜かれてきた伝統的な製法から生み出されるものです。この地で明治中期に創業した塗師屋「藤八屋」は、地域の職人を束ね、輪島塗の製造販売を手がけてきました。伝統に根ざしながら、現代の暮らしに調和する漆器づくりで「漆の未来」を志向する、その感性と確かな技が今回のコラボレーションを担います。

元町生まれのクラフトマンシップを
アトリエがつなぐ

スタージュエリーが横浜・元町に誕生したのは1946年のこと。西洋文化の薫りが溢れ、進取の気風に富んだ町のスピリットを象徴するかのように、新しい時代を迎えた女性の日常を輝かせるジュエリーをいち早く世に送り出しました。当初から店舗とともにアトリエを構え、熟練の職人を抱えていたのもスタージュエリーのユニークなところ。山手に住む外国人たちの厳しい注文に応えるために技術はより磨かれ、妥協なきクオリティを追求するクラフトマンシップは、アトリエの存在とともに、現在も脈々と受け継がれています。デザイナーとクラフトマンが密接にコミュニケーションをとれる環境は、より斬新な発想やこだわりを深めることにつながります。さらに責任をもってジュエリーを見守り続けること、すなわちスタージュエリーが大切にする万全の修理体制も国内の自社工房があってこそ。「メイドインジャパン」を貫く理由は、ここにあります。

2
卓越した技

長い時間をかけて、経験を重ねることで
習熟していく手の仕事。
輪島塗とジュエリー。
ともに妥協することなく、よりよいもの、
より美しいものを生み出そうとする
職人たちの真剣なまなざしが重なります。

120を超える丁寧な作業が
強さと美しさをつくり出す

原材料がすべて天然素材であることと定められている輪島塗。漆はもとより、木地にはアテ(あすなろ)やケヤキ、ヒバなど厳選された木材が使われます。木地づくりに始まり、強度を高めるために布を貼り付ける「布着せ」、輪島特産の「地の粉」を混ぜた漆での下地塗り、そして幾度もの研ぎや塗りを繰り返して完成に至るまで、工程は実に120以上にも及びます。職人たちは漆と対話しながら、手間と時間を惜しむことなく技を極めていくのです。

習熟した手仕事の融合
―分業だからできること

輪島塗の特徴は、徹底した分業制であること。他の産地では類を見ないほど工程は細分化されており、職人たちはそれぞれ自らの専門においてひたすら技の修練を重ねます。同じ作業を繰り返し、体に覚えさせ、さらなる技の高みへと。輪島塗は、まさに習熟した職人の手業の融合です。使い込まれた道具もまた手づくり。ものづくりにかける職人の矜持が、手から手へとリレーされていきます。

身につける人をより輝かせるために、
技と心を尽くす

スタージュエリーのアトリエでは、デザイナー、原型師、クラフトマンが連携をとりながら、ジュエリーを製作しています。中でも、スタージュエリーのものづくりに欠かせないのが原型師というスペシャリストの存在。平面に描かれたデザインを立体におこす、その仕事には、デザイナーの意図を受け止める感性と、的確かつ表情豊かに表現する高い技術が求められます。完成までのプロセスをイメージして、丁寧につくられた原型をもとに鋳造されたベースを削り、石を留め、研磨して……。息のつまるような精緻な作業。クラフトマンたちは経験や知識を共有しながら、より美しい輝きやつけ心地のよさを叶えるために、技と心を尽くします。

小さなハートに託した
ものづくりへの想い

今回のコラボレーションアイテムに選ばれたのは、“CONNECT WITH LOVE”シリーズのハートのネックレス。シャープな輪郭で描かれたモダンなハートが、さりげなくも確かな存在感を放ちます。表面につややかな漆を施すのは、その繊細さゆえに技術力が問われる作業ですが、輪島塗の熟練の職人が見事に応えてくれました。漆芸を学んだ経験から、漆にひとかたならぬ想いを抱くデザイナーの知識も大きな助けに。ともに培ってきた技と、ものづくりに向き合うクラフトマンの真摯な姿勢が響き合い、可憐にして凛としたジュエリーが生まれました。

3
⽤の美 × 造形美

優美でありながら堅牢。輪島塗が、
さらに修理をすることで長く使うことができるように、
美しさと実用性を併せ持つジュエリーもまた、
世代を超えて受け継いでゆけます。

日々、目や手に触れて。
使うほどに愛着は深まっていく

ひとつ持てば一生つきあっていける、それが輪島塗の魅力でもあります。自然素材ならではの漆の滑らかな質感は、手触りがよく、口当たりの柔らかさも格別。ハレの日用にとしまい込むのではなく、普段使いをしてこそ、漆器はその真価を発揮するというものです。しっかりと下地を施し、「布着せ」で補強をして、幾重にも漆を施す輪島塗独自の工程が生む堅牢さ。加えて、蒔絵や沈金といった加飾の技術の巧みさが、優美な表情を与えます。また、使い込むうちに欠けたり割れたとしても、修理を施せば本来の姿を取り戻すことができます。それだけ下地が堅牢につくられているということ。日常に豊かな彩りを添えてくれる漆器は、長く使うことで愛着もいっそう深まっていくことでしょう。

日常に寄り添うジュエリーとともに
時を重ねていく

スタージュエリーのアトリエでは、デザイン、製作からメンテナンスまでを一貫して行っています。たとえばブライダルリング。デザイン、品質、つけ心地へのこだわりはもちろんのこと、デザイナーが想いを描き、熟練のクラフトマンが技を駆使してつくり上げたリングには、「永久保証」という究極のアフターサービスが約束されています。メンテナンスをしながらともに時を重ねていくことで、やがて人生の一部になっていく。さらには世代を超えて手渡していけるように……。いつでも、そしていつまでも、その美しさと輝きを守り続けます。

メイドインジャパンにこだわり、卓越した技をもって、
長く使える美しいものをつくり続けること。
異なるフィールドでありながら、
その根底にあるクラフトマンシップはともに揺るぎなく、
さらには世代を超えて受け継いでいきたいと
願うもの。日本を代表する伝統工芸である輪島塗が、
すばらしい技と職人の誇りをつないでいくことが
できるよう、
ささやかな後押しになればと
始動したプロジェクト”STAR JEWELRY meets WAJIMA”。
輪島と元町をつないで
誕生したジュエリーをご紹介します。

WAJIMA CONNECT WITH LOVE
確かな手仕事の結晶として。
特別な“CONNECT WITH LOVE“ が誕生

“CONNECT WITH LOVE”シリーズのハートに
漆を施すことで、新しい命が吹き込まれました。
ジュエリーを生み出す緻密な技術と、
漆の伝統を連綿とつないできた職人の技の出会い。
小さな地金の表面に漆を均等に塗る作業は、
極めて繊細で技術力の高さが必要とされるもの。
熟練の職人が試行錯誤しながら、完成に至りました。
つややかな朱赤と、深みのある黒。
漆ならではのしっとりとした美しい光沢が、
胸元で穏やかな光を湛えます。
輪島の塗師屋「藤八屋」の親方・
塩士正英さんは言います。
「日頃、漆とは縁遠い方も、
このジュエリーを通じて漆を知り、
輪島塗にも興味を持っていただけたら
うれしいですね」と。
小さなハートに夢が託されました。

塗師屋 藤八屋|NUSHIYA TOHACHIYA Wajima

明治中期の創業以来、代々輪島塗の製造販売を手がけてきた「藤八屋」。ミシュランガイド掲載の名店などからも信頼厚く、伝統に根ざしながら現代の暮らしに調和するモダンな器を国内外に向けて発信しています。

石川県輪島市山本町脇田34-5 
TEL 0768-22-5577 
www.tohachiya.com

DoP/masato mitsunari
text/terue kawai
Produced by HEARST made